介護ケーススタディ1-高齢の母親が大腿骨骨折

目次

介護ケーススタディ1-高齢の母親が大腿骨骨折

accident-woman-832-468

典型事例の概要(仮想)

現状の課題:縁石で転倒して左大腿部骨折。急性期病院で手術を受け入院中(発症してから1ヵ月経過)。今後予想される対応すべきことやスケジュールがわからず不安である。

基本情報

氏名:Aさん(80代・女性)

要介護度:介護歴なし

主な疾患:変形性膝関節症.骨粗しょう症 

身体状況:独歩可能、時折杖を使用。

認知症状:短期記憶の低下はあるが、生活に支障がない。

家族状況等:一軒家に独居、夫は他界。キーパーソンである長男は市外に、長女は県外に在住。

母親が縁石につまずき大腿骨を骨折した。大腿部(太ももの付け根など)の骨折は、高齢の方にとって生活が大きく変わるきっかけになりやすい怪我です。あなたが当事者となった場合、頼れる家族や相談できる親戚が近く住んでいるという方は恵まれていますが、そうでない方は相当な負担がかかることになります。

いったん事態が起きれば,急性期病院での対応(手術治療法の選択・入院等)も大変ですが,回復期リハビリ病院から自宅介護や施設介護へ(療養病床をもつ病院・診療所を経由する場合も)と進む中で,仕事の都合を付けながら,様々な課題をクリアしなければなりません。

本ケースは、介護保険課の介護認定を担当していた私が作り上げた仮想の典型例です。

典型例を通して、今後予想される「退院時期の目安」と「施設探しのスケジュール」に着目して、一般的な見通しをまとめました。

1. 予想される退院時期と治療の流れ

一般的には、骨折から3ヶ月〜5ヶ月後が、最終的な「病院からの退院(または施設入所)」の時期になります。

  • 急性期病院(手術〜約1ヶ月)
    • まずは骨を固定する手術を行い、寝たきりを防ぐために数日後からリハビリを開始します。
    • 状態が落ち着く1ヶ月前後で、次の「回復期リハビリテーション病院」へ転院するのが一般的です。
  • 回復期リハビリ病院(約2ヶ月〜3ヶ月)
    • ここがリハビリの「本番」の場所です。大腿部骨折の場合、国が定めるリハビリ期間の上限は発症から90日(約3ヶ月)と決まっています。
    • 毎日集中的にリハビリを行い、ここでの期限を迎える頃(=骨折から計3〜4ヶ月後)が、実質的な「退院・施設探しのリミット」になります。

2. 退院後の施設探しのタイミングと選び方

施設探しは、回復期リハビリ病院に「転院した直後(骨折から1〜2ヶ月目)」から動き出すのがベストです。リハビリでどこまで動けるようになるか(車椅子か、伝い歩きかなど)の予測を病院側と相談しながら進めます。

状態に合わせて、以下のような選択肢が考えられます。

  • 選択肢A:まだリハビリを続けたい・自宅復帰を目指したい場合
    • 介護老人保健施設(老健):病院と自宅の中間的な施設です。3ヶ月〜半年ほど入所し、リハビリを継続しながら次の生活場所を考えられます。
  • 選択肢B:車椅子生活など、手厚い介護が長期的に必要な場合
    • 特別養護老人ホーム(特養):要介護3以上が原則対象。費用を抑えられますが、待機者が多いため退院までに間に合わない可能性があります。
    • 民間の有料老人ホーム・サ高住:要介護1〜2でも入居可能。見学から1〜2週間など、比較的短期間でスムーズに入居を決められます。

有料老人ホームとサ高住の比較(詳細な説明)は別記

3. 家族が急性期病院入院時からできる「最初の3ステップ」

  1. 病院の「MSW(医療ソーシャルワーカー)」に相談する
    現在入院している病院(または転院先)の相談窓口にいるMSWに「退院後は自宅ではなく施設を検討したい」と早めに伝えてください。地域の施設情報や、転院の手続きをサポートしてくれます。
  2. 要介護認定の「区分変更申請」または新規申請をする
    骨折によって必要な介護度が上がることが確実なため、現在の認定(未申請なら新規)を見直す必要があります。これも病院のMSWや、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談すれば病院にいる間に手続きを進められます。
  3. ケアマネジャーに連絡する
    すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、状況をすぐに報告してください。入院中から退院後の施設探しに向けて一緒に動いてくれます。

本ケースの場合、現時点ではお母様は手術が終わってリハビリを始められた段階と考えられます。介護歴がありませんので、介護申請(介護保険要介護認定等申請)は未申請ですね。病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)に申請手続きの代行やサポートを依頼できます

もし、すでに介護保険の認定を受けているのであれば、地域包括支援センター(要支援1,2)や居宅介護支援事業者(要介護1以上)のケアマネジャーに相談してください。


4. 回復期リハビリテーション病院(病棟)

回復期リハビリテーション病棟とは、急性期の治療を終え、症状が安定した患者に対し、在宅や社会復帰を目指して集中的なリハビリを提供する専門病棟です。主なリハビリの種類には、身体機能の回復を図る「理学療法(PT)」、日常生活動作を訓練する「作業療法(OT)」、発声や飲み込みを改善する「言語聴覚療法(ST)」の3つがあります。専門家による「自宅復帰に向けた集中的なリハビリ」を受けることができますが、「入院できる疾患や期間の厳格な制限」があります。認知症のみなどの場合は原則入院できません。

回復期リハビリテーションで行われるリハビリの種類

回復期では、患者一人ひとりの症状に合わせて以下の3つのリハビリを組み合わせて集中的(1日最大3時間)に行います。

  1. 理学療法(PT
    寝返る、起き上がる、立つ、歩くといった基本動作能力の回復を訓練します。
  2. 作業療法(OT
    食事、着替え、入浴、トイレなど、日常生活を送るための応用動作や、社会復帰に向けた訓練を行います。
  3. 言語聴覚療法(ST
    脳血管障害などによる「話す」「聞く」といった言語障害や、物を飲み込む「嚥下(えんげ)障害」の訓練を行います。

リハビリ対象となる主な疾患と入院期間

疾患ごとに集中的なリハビリが可能な期間(日数)の上限が定められています。

  • 脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷など:最大180日
  • 大腿骨や骨盤などの骨折、股関節・膝関節の置換術など:最大90日

リハビリテーションは、機能訓練だけでなく「食事や着替えといった生活そのものをリハビリと捉える」ことが大きな特徴です。

転院に関する注意点とポイント

  • 家族が直接申し込むことはできません
    回復期リハビリ病棟への転院には、現在の入院先からの紹介状や、病院間での調整(ベッドの空き状況や受け入れ審査)が必要です。
  • リミットは「発症・手術から2ヶ月以内」
    国のルールで、大腿部骨折の場合、回復期リハビリ病棟へ入院できるのは発症(手術)から2ヶ月以内と決まっています。そのため、現在の病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)が中心となり、手術後まもなく転院の準備を進めてくれます。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次